テスラの躍進、欧州の内燃機関禁止方針、そして中国EVメーカーの急台頭。2021年、電気自動車(EV)への移行はもはや議論の余地のない趨勢となりました。この大転換は自動車産業のサプライチェーンを根本から再編し、日本の製造業に大きな影響をもたらしています。
EV化が引き起こすサプライチェーンの構造変化
ガソリン車のエンジン・トランスミッションには約3万点の部品が必要ですが、EVはモーター・バッテリー・インバーターを中心とする構造で、部品点数は約1万点まで削減されます。この約2万点の部品が不要になることは、エンジン部品を製造してきた日本のTier2・Tier3サプライヤー(年間売上が数億〜数十億円規模の中堅・中小企業)に直接的な影響を与えます。一方でEVに新たに必要となるのはバッテリーセル・電池管理システム(BMS)・パワー半導体・電動コンプレッサーなどで、これらの製造は従来の自動車部品メーカーとは異なる技術基盤を必要とします。経済産業省の試算では、2035年までに自動車関連の製造業雇用が最大10万人規模で影響を受ける可能性があるとされています。
日本製造業のEV対応戦略とデジタル化の役割
この変革期において、日本のサプライヤーはEV部品への転換・新市場への参入・海外EVメーカーへの供給という3つの方向性を検討しています。特にデジタル技術が重要な役割を果たすのが、EVバッテリーの製造プロセスです。全固体電池など次世代電池の製造では、ナノレベルの精度管理が求められ、AIによる品質管理とデジタルツインによる製造プロセス最適化が不可欠です。また、バッテリーのライフサイクル管理(充放電データのAI解析による劣化予測)という新たなビジネス領域でも、ビッグデータ活用が競争の鍵を握ります。パナソニックがテスラとのバッテリー合弁事業、トヨタが全固体電池開発への巨額投資を進める背景にはこうした変革への対応があります。
Harryの着眼点
EV化は日本の自動車産業に試練をもたらすと同時に、新たなチャンスでもあります。特にバッテリー製造技術、パワーエレクトロニクス、軽量材料技術などは日本企業が強みを持つ領域です。重要なのは、EV時代に必要な技術とデジタル能力を早期に見極め、今から人材育成と設備投資を進めることです。EV移行の波に乗り遅れた企業と、新時代の担い手となる企業との差は、今後5年間の「先行投資」の差によって決まると考えています。
出典:経済産業省「自動車産業の将来像とEV化への対応」2021年 / 日本経済新聞「EV転換、部品メーカーへの影響と対策」2021年2月