製造業が日々生み出す膨大なデータ――生産設備の稼働データ、品質検査データ、エネルギー消費データ、物流データ――を収集・分析し、経営判断に活かす「データドリブン経営」が普及しています。勘と経験に頼っていた製造現場の意思決定がデータに基づく科学的アプローチへと進化しつつあります。
製造業のビッグデータ活用の現状と課題
製造業においてビッグデータ活用が進んでいる領域は、予知保全(設備故障の事前予測)、品質管理(不良発生要因の特定)、需要予測(生産計画の最適化)、エネルギー管理(電力コストの削減)の4つが代表的です。富士通の調査によると、国内大手製造業の約70%が何らかのデータ活用施策を推進している一方で、「収集したデータを使いこなせていない」と回答した企業が半数以上を占めています。データ活用を阻む主な障壁として、①データがサイロ化されており連携できない(ERP、MES、IoTプラットフォームのデータが別々に管理)、②データエンジニア・データサイエンティストの人材不足、③データ品質が低く分析結果の信頼性が確保できない、という3点が挙げられています。
データドリブン製造業の実現に向けたアーキテクチャ設計
データドリブン経営を実現するためには、OT・IT・IoTデータを統合管理するデータ基盤の整備が欠かせません。近年注目されているのは「産業用データプラットフォーム」です。工場内のPLC・センサーからデータを収集するIoTゲートウェイ層、MESやERPのトランザクションデータを格納するデータウェアハウス層、そして機械学習モデルで高度な分析を行うAI分析層の3層構造が基本となります。クラウドサービスではAWS IoT、Azure IoT Hub、Google Cloud IoT Coreが代表的です。国内では三菱電機の「MELSOFT MaiLab」、安川電機の「i³-Mechatronics」、日立製作所の「Lumada」など各社が独自の製造業向けデータ活用プラットフォームを展開しています。
Harryの着眼点
「データは新しい石油」と言われますが、採掘して精製しなければ価値は生まれません。製造業のビッグデータ活用でよく見られる失敗は、「データを集めること」が目的化してしまうことです。まず「どのビジネス課題を解決したいか」を明確にし、そのために必要なデータを特定し、分析モデルを設計する――この順序を守ることが成功への近道です。データを持てる大企業だけでなく、中小製造業でもクラウドサービスを活用することで、低コストでデータ活用の恩恵を受けられる環境が整ってきています。
出典:富士通「製造業ビッグデータ活用実態調査」2021年 / 経済産業省「製造業を巡る現状と課題 今後の政策の方向性」2021年