カーボンニュートラル宣言が相次ぐ中、製造業各社は工場でのエネルギー自給自足に向けて太陽光発電・蓄電池・水素などの再生可能エネルギー活用を本格化させています。IoTとAIを組み合わせたエネルギーマネジメントシステム(EMS)の高度化により、再エネの不安定な電力供給を平準化しながら工場稼働を維持する技術が成熟してきました。
工場への再生可能エネルギー導入の現状と課題
国内製造業の工場への再生可能エネルギー導入は主に①屋根置き太陽光発電、②オフサイトPPA(電力購入契約)による再エネ電力調達、③蓄電池による電力平準化、④水素燃料電池による自家発電の4つのアプローチで進んでいます。コスト面では、太陽光発電の設置費用が10年前の1/3程度まで低下しており、大規模工場では経済合理性のある投資となっています。蓄電池についてもEV普及によるリチウムイオン電池の量産効果でコストが下落。最大の課題は、再エネの出力変動(天候による発電量の変動)をどう平準化するかであり、ここでAIを活用した高精度な発電量予測と需要予測の組み合わせが鍵を握ります。
先進企業の工場ゼロエミッション取り組み事例
ソニーは2050年のカーボンニュートラルに先行し、2030年までに全世界の工場・事業所での再生可能エネルギー使用比率100%を目指す「RE100」達成へ向けた取り組みを推進。長崎県の工場では太陽光発電と蓄電池を組み合わせたマイクログリッドシステムを導入し、電力コストを年間約2億円削減しました。デンソーは工場の屋根に太陽光パネルを敷き詰めるとともに、AI-EMSで設備ごとの電力消費をリアルタイム最適化。2020年度の工場CO2排出量を2019年度比10%削減することに成功しています。政府の「グリーンイノベーション基金」(2兆円規模)でも工場のゼロエミッション化支援が盛り込まれています。
Harryの着眼点
工場のゼロエミッション化は「環境対応コスト」ではなく、中長期的には「エネルギーコスト削減投資」として捉えることができます。電力価格が今後も上昇傾向にある中、自家再エネで電力コストを固定化できる企業は強い競争優位を持ちます。また、サプライチェーン全体でのCO2削減を求める大手メーカーのニーズに応えられるかどうかが、Tier2・Tier3のサプライヤーにとって受注継続の条件になりつつあります。再エネ投資は今や「やるかやらないか」の選択ではなく、「いつやるか」の問題です。
出典:資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの導入促進策と工場への活用事例」2021年 / RE100「企業の再エネ100%調達事例集」2021年