人間が設計条件を入力するだけで、AIが数百万通りのデザイン案を自動生成し、その中から最適解を提案する「生成的設計(ジェネレーティブデザイン)」が製造業の製品開発に革命をもたらしています。軽量化・強度向上・コスト削減を同時に実現する革新的な形状が、AIによって生み出されています。
ジェネレーティブデザインの仕組みと製造業への応用
ジェネレーティブデザインとは、設計者が「荷重条件」「使用材料」「重量制限」「コスト上限」「製造方法」などのパラメータを入力すると、AIとアルゴリズムが進化的計算(遺伝的アルゴリズムなど)を用いて大量のデザイン候補を生成し、指定した最適化基準(最軽量・最低コスト・最高強度など)に最も合致するデザインを提案する技術です。オートデスクの「Fusion 360」やPTCの「Creo」、シーメンスの「NX」などの主要CADソフトウェアが機能として組み込んでいます。航空宇宙産業では、エアバスがジェネレーティブデザインで設計したキャビン仕切り部品の重量を従来比45%削減しながら、同等以上の強度を実現した事例が有名です。
国内製造業でのジェネレーティブデザイン活用と3Dプリンティングとの融合
ジェネレーティブデザインが生み出す有機的な形状は、従来の切削加工では製造困難なことが多いため、3Dプリンティング(積層造形)との組み合わせが効果を最大化します。この「DfAM(積層造形を前提とした設計)」という考え方が製造業に広がっています。国内では、IHIが航空機エンジン部品の設計にジェネレーティブデザインを適用し、試作サイクルを大幅に短縮することに成功しています。ホンダも自動車部品の軽量化設計で活用を始めており、車体骨格構造の最適設計に取り組んでいます。また、医療分野では人工骨・インプラントの患者個別最適設計にジェネレーティブデザインが活用され始めており、製造業から医療分野への展開も進んでいます。
Harryの着眼点
ジェネレーティブデザインは、「AIが人間の代わりに考える」のではなく、「AIが人間では発想できない可能性空間を探索する」ツールです。この技術の真の価値は、エンジニアの創造性を制限するのではなく、解放する点にあります。従来「常識的な範囲」で考えていた設計者が、AIが提示した有機的な形状から逆にインスピレーションを得て、より革新的な製品を生み出す――これが共創型AIの理想形です。日本の製造業が持つ「設計の緻密さ」とジェネレーティブデザインを組み合わせれば、世界最高水準の製品開発が実現できると確信しています。
出典:オートデスク「ジェネレーティブデザイン活用事例―製造業の革新」2021年 / IHI技報「AIを活用した航空機エンジン部品設計最適化」2020年