クラウドERP導入で製造業の基幹システムが刷新――SAP S/4HANAへの移行が加速

多くの製造業が20〜30年前に導入したオンプレミス型の基幹システム(ERP)を今も使い続けています。しかしサポート終了や「2025年の崖」と呼ばれるレガシーシステムの限界が近づく中、クラウドERPへの移行が急務となっています。SAP S/4HANAなどの次世代ERPへの移行が国内製造業でも本格化しています。

クラウドERP移行の必要性と製造業への恩恵

2021年現在、多くの製造業が使用するSAP ERPや富士通のGLOVIA、NTTデータのSPLANDELなどのオンプレミス型ERPは、2025〜2027年頃にサポート終了を迎えます。レガシーシステムにはカスタマイズが積み重なっており、新機能の追加やシステム連携が困難な状態です。クラウドERP(SaaS型)への移行によって得られる恩恵は、①リアルタイムの経営データ可視化(在庫・売上・生産状況を即座に把握)、②AIと機械学習の組み込み機能(需要予測・在庫最適化の自動化)、③IoTデータとのシームレスな連携(工場設備データをERPと自動統合)、④保守コストと運用負荷の削減(クラウドベンダーがインフラを管理)の4点です。SAP社はS/4 HANA Cloudの移行支援パッケージを強化しており、国内でも大手製造業を中心に移行プロジェクトが急増しています。

ERP移行プロジェクトの落とし穴と成功の鍵

クラウドERP移行は大規模で複雑なプロジェクトであり、失敗リスクも高い。よくある失敗パターンとして、①長年のカスタマイズをそのまま移行しようとして工数・コストが膨らむ、②現場の業務プロセスを変えずにシステムだけ新しくしようとする、③データ移行の質管理が甘く、移行後にデータの不整合が発生する、が挙げられます。成功事例として、旭化成は「クリーンコア(標準機能を最大限活用し、カスタマイズを最小化する)」方針でSAP S/4HANA移行を進め、移行期間を短縮しながら運用コストを30%削減しました。ERP移行は「システムの刷新」ではなく「業務プロセスの改革」であると捉えることが成功の大前提です。

Harryの着眼点

クラウドERPへの移行は、デジタル変革の基盤工事です。工場のIoTセンサーデータ、MESの生産実績、SalesforceなどのCRM、会計システムをシームレスに繋げる「データの高速道路」がERPです。この基盤が整って初めて、AIによる需要予測や自動発注、リアルタイム原価計算といった高度な分析が可能になります。「2025年の崖」を乗り越えた先に、データドリブンな製造業の姿があります。移行は確かに大変ですが、遅らせるほどリスクは高まります。今こそ移行計画に着手すべき時です。

出典:SAP社「S/4HANA Cloud 製造業向け移行事例」2021年 / 経済産業省「DXレポート2.1(DX経営に関する調査)」2021年

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