汎用AIの限界を超えるべく、製造業特有の技術文書・規格・設計ノウハウで訓練した「産業用LLM(大規模言語モデル)」の開発競争が激化している。シーメンス・GE・三菱電機などが独自AIの開発・提供を開始した。
汎用LLMの限界——製造業専門知識は一般コーパスに少ない
ChatGPT/GPT-4は汎用知識には強いが、特定の産業機器の技術仕様・故障診断ロジック・品質規格(ISO・JIS)への対応には限界がある。「この工場で使っているPLC型番XXXのエラーコードYYYの対処法は?」という質問に正確に答えるには、その設備の技術文書で追加訓練した専門AIが必要だ。RAG(検索拡張生成)で社内文書を参照させる手法も有効だが、深い理解には専門訓練が勝る。
シーメンスのIndustrial LLMとGEのFoundation Model
シーメンスは製造FA機器の技術文書・トラブルシューティング事例データで訓練した「Industrial LLM」を開発し、SIMATIC製品のサポート業務に展開している。GEはエネルギー・航空分野の技術ドキュメントで訓練したFoundation Modelを開発し、発電設備の保守診断AIとして活用している。日本では三菱電機が製造装置向けの日本語対応専門AIを開発中で、制御システムのトラブルシューティング支援への応用を進めている。
Harryの着眼点
産業用LLMの価値は「何でも知っているふり」をせず、「自社の設備・プロセス・規格に精通した専門家」として機能することにあります。製造業の暗黙知——マニュアルに書かれていない現場ノウハウ——をどうAIに学ばせるかが最大の課題です。ベテラン技術者の知見をAIに継承するシステムとして、産業LLMの価値は非常に大きいと思います。
出典:Siemens「Industrial AI Strategy Update」2023年、GE Digital「Foundation Models for Industrial Applications」2023年