製造業のDX人材育成が急務――デジタルスキル標準と社内リスキリングの実践

製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進において、最大のボトルネックは「人材不足」です。IoT・AI・データ分析などのデジタル技術を理解し、製造現場の課題解決に活かせる人材が絶対的に不足しています。企業はリスキリング(学び直し)と採用の両面から人材育成に取り組んでいます。

DX人材の定義とスキル要件

経済産業省は2021年3月、「デジタルスキル標準」の策定に向けた検討を開始しました。製造業でのDX人材は大きく①DXを推進するリーダー人材(DX推進担当・CDO)、②データサイエンス・AI活用人材、③IT・デジタル技術の実装人材、④デジタルツールを使いこなせる現場人材の4層に分類されます。特に製造業に特有なのは、「OTとITの両方を理解できるブリッジ人材」の重要性です。製造設備の仕組みを知りながら、クラウドやAPIの知識も持ち、現場の課題とデジタルソリューションを橋渡しできる人材が最も不足しています。IPAの調査では、DX人材が「大幅に不足」または「不足」と回答した製造業企業が全体の80%以上に達しています。

製造業大手のリスキリング実践事例

富士通は全従業員約13万人を対象に「DXトレーニング」プログラムを展開し、AIや機械学習の基礎から業務活用まで段階的に学べるカリキュラムを整備。同社は2022年度までに全社員がDXの基礎知識を習得することを目標としています。パナソニックは現場の技術者がローコードツール(Power AppsやAppSheetなど)でデジタルツールを自作できる「シチズンデベロッパー」育成に力を入れており、IT部門に頼らず現場主導でのデジタル化を推進しています。中小製造業向けには、ポリテクセンター(職業能力開発促進センター)がIoT・AI活用の職業訓練コースを充実させており、在職者が低コストでスキルアップできる環境が整いつつあります。

Harryの着眼点

DX人材育成で最も重要なのは、「技術を教える」だけでなく「デジタルで考える思考習慣を育てる」ことです。製造現場の技術者は問題解決能力が高い人が多いので、デジタルツールの基礎を身につければ、自分たちで現場の課題をデジタルで解決するアイデアが出てきます。私が支援してきた企業でも、現場改善のDXは「IT専門家が導入した」案件より「現場が自分で考え実装した」案件のほうが定着率が高い傾向があります。トップダウンの投資と、ボトムアップの現場主導の取り組みを両輪で回すことが人材育成成功の鍵です。

出典:経済産業省「デジタルスキル標準の策定に向けた検討状況」2021年 / IPA「DX白書2021」

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