3Dプリンティング(積層造形、アディティブ・マニュファクチャリング)は、かつて試作品製造の専用技術でしたが、今や最終製品の量産にも活用される実用的な製造技術として製造業全体に普及が進んでいます。航空宇宙、医療、自動車から消費財まで、3Dプリンティングが開く新たな製造の可能性を探ります。
3Dプリンティング技術の種類と製造業での選択
産業用3Dプリンティングの主要な技術方式には、①FDM(熱溶解積層法):最も普及、樹脂材料、比較的低コスト、②SLA/DLP(光造形):高精細、樹脂・セラミック、医療・歯科分野に強み、③SLS(粉末焼結):樹脂粉末を使い、サポート材不要、複雑形状に優れる、④DMLS/SLM(金属粉末焼結):チタン・インコネル・ステンレス鋼等の金属製品製造、航空宇宙・医療インプラントに活用、⑤バインダージェッティング:大型・高速、鋳造型や金属部品製造に適する、の5つが代表的です。GEアビエーション(現GE Aerospace)はジェットエンジン燃料ノズルを3D金属プリンティングで製造し、従来20部品を組み合わせていた構造を1部品に統合し、重量25%削減・耐久性5倍を実現した事例が産業界全体への普及に大きく貢献しました。
コロナ禍で加速した3Dプリンティングの産業普及
COVID-19パンデミックは、3Dプリンティングの柔軟性と分散生産能力を証明する機会となりました。世界中の医療現場でマスク・フェイスシールド・呼吸器部品が3Dプリンターで緊急製造され、サプライチェーン断絶時の「生産能力の分散化」への有効性が実証されました。その後、製造業各社はスペアパーツのオンデマンド3D印刷を検討する動きが加速。「デジタル在庫(3Dデータを保管し必要時に印刷)」というコンセプトが現実味を帯びてきました。国内では、DMG森精機がAM(アディティブ・マニュファクチャリング)技術を組み込んだ複合加工機を展開し、切削加工と3D造形を1台で実現する次世代製造システムを提供しています。
Harryの着眼点
3Dプリンティングが製造業にもたらす本質的な変化は「小ロット・多品種・カスタム生産のコスト革命」です。従来は金型を作るコストと時間が障壁となって実現できなかった、個人・顧客それぞれにカスタマイズした製品の製造が、3Dプリンティングで経済的に可能になります。義足・補聴器・オーダーメイド靴など医療・福祉分野では既にビジネスモデルが確立しつつあります。日本の中小製造業にとっては、少量多品種の特注品・試作品製造での活用から始めることで、顧客への提案力が格段に高まります。
出典:GEアビエーション「3D金属プリンティングによるエンジン部品革新」/ Wohlers Associates「Wohlers Report 2021 Additive Manufacturing」