「作って、使って、捨てる」という線形経済から、「作って、使って、回収・再生・再利用する」循環経済(サーキュラーエコノミー)への転換が製造業に求められている。EU規制・投資家の圧力・消費者意識の変化を受け、製品設計から生産・流通・廃棄に至る全ライフサイクルでの資源効率化が製造業の新たな競争軸となっている。
デジタルパスポートと製品ライフサイクル管理
EUのサーキュラーエコノミー行動計画では、製品ごとに素材・製造・修理・リサイクル情報を記録した「デジタル製品パスポート(DPP)」の義務化が進んでいる。2026〜2030年にかけてバッテリー・繊維・電子機器・建設製品などにDPPが適用され、製品の一生を追跡可能にするトレーサビリティ基盤の整備が製造業に求められる。ブロックチェーンとIoTを組み合わせた製品追跡システムが、リサイクル素材の品質証明や再製造(リマニュファクチャリング)の促進に活用されている。
製造工程での廃棄ゼロ・循環素材活用の実装
製造工程での廃棄削減に向けた取り組みが各社で進んでいる。プラスチック廃棄物を原料に戻す「ケミカルリサイクル」、使用済み製品を分解・検査・整備して新品同様の性能に戻す「リマニュファクチャリング」、製品に再使用可能な部品を設計段階から組み込む「エコデザイン」が主要アプローチだ。キャタピラーは建設機械の主要部品をリマニュファクチャリングして新品の半値以下で販売するビジネスを確立しており、製造業の循環経済モデルの先駆事例として注目されている。
Harryの着眼点
循環経済への転換は単なる環境対応ではなく、資源価格高騰リスクの低減・顧客への新サービス提供・規制対応コストの最小化という経済的合理性も持つ。日本は「もったいない」文化を持ち、修理・再利用の精神は製造業のDNAにも根付いている。この文化的強みをデジタル技術(DPP・IoT・AI)と組み合わせて「日本型循環製造」のモデルを確立することが、SDGs時代の製造業競争力の重要な源泉となる。
出典:欧州委員会「Circular Economy Action Plan 2025 Progress Report」、経済産業省「サーキュラーエコノミーに係る政策パッケージ」(2025)