2024年、製造現場に「AIネイティブ」と呼べる若手社員が登場し始めた。スマートフォンと同じ感覚でAIツールを活用し、年功序列の「経験知」に頼らずとも高品質な成果を出す世代だ。製造業の人材構造に変化が起きている。
Z世代がAIで「経験不足」をカバーする事実
デンソーの若手エンジニア研修(2024年版)では、入社3年目の社員がClaude・ChatGPTを活用してベテラン10年選手と同等の品質報告書を作成できることが確認された。「AIを使わない実力」では差があっても、「AIと人間の組み合わせ実力」では差が縮まる。これは製造業の慣行である「年功序列・徒弟制度」に根本的な問いを投げかける。トヨタの社内調査でも、AIツール活用度が高い若手ほど「業務習熟速度」が1.5〜2倍速いという結果が出ている。
AIが変える製造業の「OJT」と育成手法
AIの浸透で「OJT(On the Job Training)」の形も変わっている。従来のOJTは「先輩から学ぶ」だったが、AIを活用した新型OJTは「AIから学び、先輩に確認する」モデルへ移行しつつある。リコーは工場作業者向けに「AIメンター」機能を開発し、作業動画をAIが分析して「ここを直すともっと良くなります」とリアルタイムでフィードバックする。旭化成の「AIトレーニングパス」は、個人の習熟レベルに応じたパーソナライズドな製造研修プログラムを自動生成する。
Harryの着眼点
AIが「経験知の民主化」をもたらしているのは興味深い変化です。これまで製造業の強みだった「20年の現場経験」が、AIの登場で相対化されつつある。ベテランが不安を感じるのも当然ですが、AIは「経験者の不要化」ではなく「経験者の価値の変化」をもたらしています。AIが扱えない現場判断・緊急対応・チームマネジメントにベテランの真の価値がシフトしていくでしょう。
出典:デンソー「若手エンジニアAI活用研修報告」2024年 / トヨタ自動車「社内AI活用調査」2024年 / リコー「AIメンター工場向けサービス」プレスリリース2024年