製造業における多品種少量生産の最大のボトルネック「段取り替え」を、AIと協働ロボットの組み合わせがついに解消しつつある。2025年、「段取り替えレスライン」の実用化が日本製造業の生産性革命をもたらす可能性がある。
段取り替え問題とAI×ロボットによる解決
段取り替えとは、ある製品の生産から別製品の生産に切り替える際の設備調整作業だ。自動車部品製造では1回の段取り替えに30分〜3時間を要し、多品種少量では生産時間の20〜40%が段取り替えに費やされる。AIビジョンで製品形状を自動認識→協働ロボットが治具・工具を自動交換→AIが加工パラメータを自動設定する「段取り替え自動化システム」をDMG森精機と三菱電機が共同開発。金属加工ラインでの試験では段取り替え時間を90%削減した。
「マスカスタマイゼーション」を可能にする段取り替え革命
段取り替えレスラインが実現すると、「1個単位の注文でも大量生産と同じコスト」で製造できる「マスカスタマイゼーション(大量個別化)」が現実になる。ナイキは製造受託企業と共同でアパレルの個別カスタムを工場で実現する取り組みを進めており、2026年の商用化を目指している。日本では島精機製作所が編み機のAI自動段取り変更を実用化し、靴下1足単位のカスタム生産ラインを稼働させた。
Harryの着眼点
段取り替え問題は「多品種少量=コスト高」という製造業の常識の根本原因でした。これが解消されれば、少量でも大量と同コストで生産できる——それは製造業のビジネスモデルを根本から変える可能性があります。3Dプリンティングが「原型の概念」を変えたように、段取り替えレスラインは「ロットの概念」を変えます。日本のものづくりが「多品種」を強みにする時代の到来です。
出典:DMG森精機・三菱電機「段取り替え自動化システム」共同発表2025年 / 島精機製作所「カスタム編み機段取り自動化」2025年 / McKinsey「Mass Customization in Manufacturing」2025年