リチウムイオン電池(LIB)を超える次世代電池技術の開発競争が激化している。全固体電池・ナトリウムイオン電池・リチウム硫黄電池など多様なアプローチが並走し、2025〜2030年にかけて電気自動車・定置用蓄電池・産業用電源の分野に革命的変化をもたらす可能性がある。
全固体電池の量産化競争——トヨタを筆頭に各社が開発を加速
全固体電池は電解質を液体から固体に変えることで、高エネルギー密度・長サイクル寿命・不燃性を実現できる次世代電池だ。トヨタは2027〜2028年の全固体電池搭載EV量産化を目標に掲げ、パナソニックプライムプラネット・エナジー&ソリューションズと共同開発を進めている。韓国のサムスンSDI・LG エナジーソリューション、中国のCATL(寧徳時代)も全固体電池の量産化ロードマップを発表しており、国際的な先行争いが激化している。課題は製造コストと固体電解質の大面積化技術であり、これらを克服した企業が次世代EV・蓄電池市場を制する。
ナトリウムイオン電池と新材料——リチウム依存からの脱却
レアメタルであるリチウム・コバルトへの依存を減らす手段として、豊富に存在するナトリウムを使うナトリウムイオン電池への注目が高まっている。CATLが2023年に製品化を発表し、資源依存リスクの低い電池として新興国市場向けEVや大規模蓄電システムへの採用が進んでいる。また、正極材料としてのリン酸鉄リチウム(LFP)の普及も進み、コバルトフリー電池の市場シェアが拡大している。これらの動向は、電池材料のサプライチェーンにも大きな影響を与え、日本の電池材料メーカー(住友金属鉱山・戸田工業等)も対応を迫られている。
Harryの着眼点
電池技術の革新は製造業全体に波及する。EVシフトで変わる自動車産業の製造プロセス(溶接からボンディングへ、エンジン製造から電池組み立てへ)は、部品メーカー・設備メーカーの事業転換を迫る。日本の製造業はリチウムイオン電池の時代に電池製造装置・検査装置・材料で強みを築いてきたが、全固体電池時代の製造プロセスは大きく異なる可能性がある。次世代電池の製造技術を早期に確立し、グローバル電池産業への装置・材料供給という日本の強みを維持するための戦略的投資が求められる。
出典:トヨタ「全固体電池開発ロードマップ」(2025)、BloombergNEF「Electric Vehicle Outlook 2025」