ロボット工学に革命をもたらす「触覚センサー」技術が急速に進歩し、人間の手先の器用さに迫るロボットの実用化が近づいている。従来のロボットが苦手だった「柔らかいもの・不規則形状のものを扱う」作業の自動化が、触覚フィードバックとAIの組み合わせで実現し始めた。
触覚センサー搭載ロボットが広げる自動化の可能性
SynTouch、GelSight(MITスピンオフ)、産総研のGelSheetなど次世代触覚センサーが製造用ロボットに搭載され始めた。食品のピッキング(水々しい苺を潰さず掴む)、配線ハーネスの組み付け、電子部品の繊細な組立など、これまで人間の熟練技能に頼っていた作業の自動化事例が登場している。テスラはロボット「Optimus」の開発発表で人型ロボットへの期待を一気に高め、ボストン・ダイナミクスのAtlas・Spotも産業応用の実証を続けている。
自律学習ロボットが熟練技術を習得する時代へ
強化学習とシミュレーションを組み合わせた「ロボット自律学習」が実用化の域に達し始めた。仮想空間で数百万回のシミュレーション訓練を重ねたAIをロボットに搭載し、実際の製造現場でスムーズに動作させる「シム・トゥ・リアル転移」技術が進歩。デンマークの技術系スタートアップNoviaStar(後の前身)やグーグルDeepMindが工場での強化学習ロボットの研究成果を発表した。
Harryの着眼点
触覚センサーと強化学習は、ロボットに「感じて学ぶ能力」を与える組み合わせだ。これが実用化されると、人間の熟練技術者しかできないと思われていた多くの作業がロボットに代替可能になる。日本の製造業が誇る「手の技術」の継承問題に、新しい解決策が生まれつつあるとも言える。ただし「何でもできるロボット」はまだ先の話であり、適用する作業を賢く選ぶことが重要だ。
出典:テスラ「Tesla Bot(Optimus)」発表(2021年8月)、産業技術総合研究所「次世代触覚センサー研究成果」(2022年)