鉄鋼業は世界CO2排出量の7〜8%を占める最大の産業排出源のひとつだ。日本製鉄とJFEスチールが2024年3月に更新した「カーボンニュートラル・ロードマップ」は、水素直接還元製鉄(HDRI)と電炉転換により2030年までに30%削減、2050年までにゼロ達成を目指す。
水素還元製鉄の技術的現状と課題
従来の高炉製鉄はコークス(石炭由来)でCO2を排出するが、水素直接還元製鉄(HDRI)では還元剤として水素を使うため排出物が水になる。日本製鉄は東日本製鉄所京浜地区で試験炉「COURSE50」を稼働させ、水素比率20〜30%での高炉操業に成功した。しかし課題は「グリーン水素のコスト」だ。現状では製造コストが従来鉄鋼の2〜3倍になるため、政府支援と炭素税の整備が商業化の前提条件となる。
電力・水素インフラとの連携が鍵
水素製鉄の商業化は単独企業では実現不可能で、再生可能エネルギー発電会社・水素製造・輸送インフラとの連携が必須だ。ENEOSと日本製鉄が共同で「水素バリューチェーン構築計画」を発表し、2030年に年間100万トンの水素供給体制を整備する計画だ。また欧州では、EU Carbon Border Adjustment Mechanism(CBAM)が2026年から本格稼働し、高炭素鉄鋼への関税が課されるため、輸出向けの日本鉄鋼に脱炭素化の圧力がかかる。
Harryの着眼点
水素製鉄は技術的には可能であることが証明されました。残る問題はコストとインフラです。グリーン水素の製造コストが2030年に現在の3分の1まで下がれば商業ベースに乗る計算が成り立ちます。日本政府の脱炭素投資20兆円のうち一部が水素インフラに充てられており、鉄鋼業の脱炭素化は「2050年の夢」ではなく「2030年の現実課題」になってきたと感じています。
出典:日本製鉄「2030年カーボンニュートラル・ロードマップ」2024年3月 / JFEスチール「Green Steel戦略」2024年 / EU「CBAM規則」2023年