「取って、作って、捨てる(Take-Make-Dispose)」という直線型(リニア)経済モデルから、資源を循環させる「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への転換が、世界的な政策課題となっています。デジタル技術はこの転換を推進する強力なエンジンであり、製造業がサーキュラーエコノミーの実現に向けて果たせる役割は大きいです。
サーキュラーエコノミーにおけるデジタル技術の役割
サーキュラーエコノミーを実現するためのデジタル技術の主な役割は3つあります。①製品情報の追跡(デジタルプロダクトパスポート):製品の材料組成・製造プロセス・リサイクル方法をデジタルで記録・公開し、製品ライフサイクル全体での資源管理を可能にする。②使用状況の最適化:IoTで製品の使用状況をモニタリングし、最適な使用量・メンテナンスタイミングを提案することで製品の寿命を延ばす「Product-as-a-Service」モデル。③廃棄物・副産物のマーケットプレイス:工場から出る廃棄物・副産物をAIでマッチングし、他の企業の原料として活用する「産業共生(インダストリアルシンビオシス)」を促進する。EUは「デジタルプロダクトパスポート」の段階的義務化を進める方針を示しており、日本企業も対応が必要です。
国内製造業のサーキュラーエコノミー取り組み事例
日立製作所は「デジタルサーキュラーエコノミー」を経営の重点テーマに位置づけ、IoTを活用した製品の使用状況モニタリングと、製品リユース・リサイクルのデジタル管理システムを展開しています。キヤノンは使用済みトナーカートリッジの回収・再生プログラムで国内シェアトップを維持し、回収率99%超を達成。リコーは「3R(Reduce・Reuse・Recycle)」に加え「Repair・Remanufacture・Recover」を加えた6Rの取り組みを推進し、複合機のリマニュファクチャリング(再製造)を事業化しています。これらの事例は、サーキュラーエコノミーがコスト削減だけでなく新たな収益源を生み出すことを示しています。
Harryの着眼点
製造業のサーキュラーエコノミーへの参加は、単なるCSR活動ではなく経営戦略の核心になりつつあります。EU規制やESG投資家の要求から、製品のカーボンフットプリントとリサイクル可能性の開示が義務化される流れは止まりません。この文脈でデジタル技術の「製品ライフサイクル全体の可視化・最適化」機能は、まさにサーキュラーエコノミーのインフラです。「作って終わり」の製造業から「使い続けられる製品・サービスを提供する」製造業への転換こそが、Industry 4.0が目指す未来像と私は考えています。
出典:欧州委員会「New Circular Economy Action Plan」2020年 / 環境省「循環経済ビジョン2020」