高所や危険区域の設備点検、広大な工場敷地の巡回など、これまで人間が行っていた多くの点検作業にドローンが活躍する時代になりました。石油化学プラント、製鉄所、発電所などの大規模施設での実用化が進み、安全性と効率性の両立が現実のものとなっています。
産業用ドローンの工場・プラント点検への応用
産業用ドローンの工場・プラント点検での活用は、主に①高所設備の外観点検(橋梁、タンク、煙突、配管など)、②熱赤外線カメラによる設備温度異常検知、③ガス検知センサーを搭載したガス漏れ巡回点検、④広域敷地の監視・セキュリティパトロール、の4領域に大別されます。ドローンによる点検は、人間が足場を組んで高所作業するよりも安全で、コストと時間も大幅に削減できます。点検時間の比較では、従来2日かかっていた石油タンクの外観検査がドローン活用で4時間に短縮された事例もあります。国内では新日本空調やJFEスチール、東京電力などがドローン点検を積極的に導入しています。
自律飛行とAI解析が点検の精度を革新
最新の産業用ドローンは、GPSと3Dマッピング技術を組み合わせた「自律飛行」が可能で、事前に設定した飛行経路を正確にたどりながら設備を撮影します。収集した映像データはAI画像解析で自動処理され、ひび割れ・腐食・変色などの異常箇所が自動検出されます。これにより、熟練検査員の目視判断に頼らなくても、客観的かつ定量的な点検結果が得られます。国土交通省は2022年からドローンの「第三者上空飛行(レベル4)」解禁を予定しており(2021年2月現在)、屋外産業施設でのドローン活用がさらに広がる見通しです。NTTドコモとゼンリンが構築している3Dマップを活用したドローン自律運行管理システム(UTM)の整備も進んでいます。
Harryの着眼点
工場点検にドローンを活用することで「危険作業の安全化」と「点検コスト削減」が同時に実現できる点が魅力です。特に日本の製造業では施設の老朽化が進んでおり、定期的かつ詳細な点検が欠かせません。しかしベテラン検査員の高齢化・引退により、熟練の目を持つ人材が不足しています。ドローン+AIの組み合わせは、この人材不足の問題にも対応できます。今後はドローンが収集したデータをデジタルツインに統合し、設備の劣化を長期的にトラッキングする仕組みが標準化されるでしょう。
出典:国土交通省「ドローンの飛行ルールと手続きガイド」2021年 / 産業技術総合研究所「インフラ点検ロボット・AI活用事例集」2020年