量子コンピューティングの産業応用――製造・物流・創薬分野で始まる量子革命

2021年、量子コンピューティングの産業実用化に向けた動きが加速した。IBMが127量子ビットプロセッサ「Eagle」を発表、グーグルとインテルも量子チップ開発で競争を激化させる中、製造業・物流・金融分野での量子コンピュータ活用の実証実験が世界各地で進んでいる。

製造業での量子最適化が現実に近づく

フォルクスワーゲンとDBSバンクが量子コンピュータを活用した交通フロー最適化と金融ポートフォリオ最適化の実証に成功。製薬大手メルクは量子シミュレーションを用いた新薬候補化合物の分子設計に量子コンピュータを活用する研究を発表した。フォードとBMWもサプライチェーン最適化問題に量子アニーリングを適用する実証プロジェクトを進めており、古典コンピュータでは解けなかった大規模組合せ最適化問題への応用が始まっている。

量子セキュリティと量子暗号の実用化

量子コンピュータの計算能力が現在の暗号方式を危うくするとの懸念から、「耐量子暗号(PQC)」の標準化がNISTで進んでいる。2021年には最終候補アルゴリズムが絞られ、2024年の標準化を目指した動きが本格化。中国では量子暗号通信ネットワークの実用化が進み、北京-上海間2000kmの量子通信幹線が運用中だ。

Harryの着眼点

量子コンピュータはまだ「汎用コンピュータ」として使える段階ではないが、特定の組合せ最適化問題や量子シミュレーションにおいては古典コンピュータを凌駕する実用例が出始めた。製造業の経営者は今すぐ量子コンピュータを導入する必要はないが、5〜10年後の産業応用を見据えた技術動向の把握と人材育成を今から始めることが重要だ。

出典:IBM「127量子ビットプロセッサEagle」発表(2021年11月)、NIST「Post-Quantum Cryptography Standardization」プロジェクト

コメントを残す