経済産業省が2018年に警告した「2025年の崖」——古いITシステムを刷新できなければ年間最大12兆円の経済損失が生じるという試算——が現実の脅威として迫っている。製造業は特に、ERP・MES・SCADA等のレガシーシステム問題が深刻だ。
2025年の崖が製造業に与える具体的リスク
IDC Japan(2024年1月)の調査では、製造業の63%がSAP ERP 6.0の2027年サポート終了に対応できていない。老朽化したシステムはサイバー攻撃の標的になりやすく、実際に2023年のランサムウェア被害企業の38%がEOL(サポート終了)システムを起点に侵害された。ただし「一気に刷新」は危険で、失敗企業の多くが「まるごとSAP S/4HANA移行」を試みて工期遅延・コスト爆発に直面した事例が相次いでいる。
「断片化移行」アプローチの有効性と事例
成功しているのは「断片化移行(Modular Migration)」戦略だ。コア業務システムは現行維持しながら、特定の機能(在庫管理、品質管理)だけをクラウドSaaSに切り出す手法だ。住友電工は製造実行システム(MES)のみをクラウド移行し、18ヶ月でROIを実現。富士フイルムはレガシーERPをAPIゲートウェイで囲い込み、新機能を外付けでクラウドサービスと連携させる「ビモーダル戦略」を採用している。
Harryの着眼点
「2025年の崖」は現実ですが、パニックになる必要はありません。重要なのは、自社のシステムの何が「2025年以降も使えるか」と「変えなければならないか」を正確に棚卸しすること。全部変える必要はなく、変えるべき部分を小さく切り出して段階的に移行することが正解です。崖を超えることよりも、「自社のシステムの現状把握」から始めることが最初の一歩です。
出典:IDC Japan「日本製造業IT基盤調査2024」/ 住友電工 IT戦略報告2023 / 富士フイルム「ビモーダルIT戦略」