都市間移動の概念を変える「空飛ぶクルマ」(eVTOL:電動垂直離着陸機)が量産・商業化フェーズに突入した。Joby Aviation・Archer Aviation・Liliumなどが型式証明取得・商業運航開始を目指す中、eVTOL製造は航空機産業・自動車産業・電池産業が交差する新たな製造フロンティアとなっている。
eVTOL製造の技術的特徴と課題
eVTOLは電動モーター・電池・プロペラ(ローター)・フライバイワイヤ制御・航空電子機器を統合した複合製品だ。航空機規格(DO-178C、DO-254等)に準拠したソフトウェア・ハードウェアの信頼性設計が求められ、部品の製造・検査基準は自動車より格段に高い。電池の重量エネルギー密度がeVTOLの航続距離・搭載量・コストを決定する最大のボトルネックであり、全固体電池の実用化がeVTOLの競争力を飛躍的に高めると期待されている。製造面では、カーボン複合材料の自動積層技術・モーター大量生産・バッテリーパック組み立ての自動化が量産コスト低減の鍵となる。
日本企業のeVTOL産業への参入機会
日本はeVTOL整備・商業化に向けた官民の取り組みが進んでいる。ANAとJALが海外eVTOL企業と提携して運航事業者としての参入を検討する一方、ホンダはインタープリットブルエア(ハイブリッド型eVTOL)の開発を進めている。製造業の観点では、炭素繊維複合材料(東レ・帝人)・精密電子部品(ムラタ・TDK)・小型モーター(日本電産・マブチ)・制御システム(安川電機・三菱電機)など、eVTOLに必要な部品・素材で日本企業が強みを持つ。
Harryの着眼点
空飛ぶクルマは「第4次産業革命の空の乗り物」だ。電動化・自律飛行・コネクティビティの三要素を統合したeVTOLは、製造業のあらゆるデジタル技術を結集した集大成とも言える。2025〜2030年代のeVTOL市場は数兆円規模に成長すると予測されており、この新市場のサプライヤーとして日本の製造業が重要な役割を担えるよう、今から研究・認証・パートナーシップ構築を進めることが重要だ。
出典:国土交通省「空飛ぶクルマの実現に向けたロードマップ2025改訂」、Morgan Stanley「Urban Air Mobility Market Forecast」(2026)