協働ロボット(コボット)の次世代——力覚センサー×AIで「感触を覚える」ロボットへ

URやFANUCが牽引してきた協働ロボット(コボット)市場に、力覚センサーと深層学習を組み合わせた「感触学習型」ロボットが登場し始めた。ネジ締め・ケーブル挿入・研磨など、人間の触覚に依存してきた繊細な組立作業を自動化できる段階に近づいており、製造現場の「最後の1マイル」自動化に突破口が開きつつある。

力覚フィードバックと深層学習の融合

従来のロボットは位置制御(どこに手先を動かすか)が主流だったが、力覚(インピーダンス)制御は「どのくらいの力で押さえるか」を動的に調整する。これにAIを組み合わせると、試行錯誤データからタスク固有の力加減を自動学習できる。MITとAmazon Roboticsの共同研究では、「Dexterous Manipulation」と呼ばれる巧みな操作をロボットアームが数百回の試行で習得できることを実証。スタートアップのPhysical Intelligenceは、汎用ロボット操作の基盤モデル「π₀」を2024年末に公開し、様々な形状・素材の物体把持を単一モデルでこなした。

製造現場への導入事例と市場動向

ABBのYuMiコボットにAI力覚学習モジュールを搭載したパイロットラインがスイスの時計製造工場で稼働中。精密部品の組立作業で不良率0.3%以下を達成しており、熟練工比較でサイクルタイム110%と同等水準に近づいている。国際ロボット連盟(IFR)の予測では、2025年の協働ロボット市場は前年比22%増の75億ドル規模に達し、2030年までに産業用ロボット全体の30%超をコボットが占める見通しだ。

Harryの着眼点

「感触を覚えるロボット」は、ベテラン職人の技を数値化・移転する可能性を秘めている。これまで言語化しにくかった「手の感覚」がデータになれば、技能継承問題の突破口になる。ただし、力覚学習には大量の試行データが必要で、既存の生産ラインで学習データを収集するには工程設計の工夫が要る。新規導入時は「学習専用サブライン」の設置を検討することが、投資対効果を高める鍵になると私は考えている。

出典:国際ロボット連盟(IFR)「World Robotics 2024」;Physical Intelligence「π₀ Foundation Model」論文(2024年11月);ABB Robotics 事例資料「YuMi AI Integration」

コメントを残す