インダストリー4.0思想の中に、Cyber Physical SystemやCollaborative Roboticsの導入という考えがある
Cyber Physical Systemは実空間での出来事、つまりヒトや機械・モノの動きをサイバー空間で捉えている事と一致させ制御下に置く考えである。
またCollaborative Roboticsを取り入れる事は、ロボットがヒトを助けて協業をするという事が目的である。
ロボットは通常サイバー空間上のプログラム・指令どおり動くが、ヒトはそういうわけにはいかない。ヒトは間違いを起こすこともあるが、ロボットやプログラムに出来ない判断を下すことも出来る。
しかしサイバー空間上のプログラム・指令が全て正となれば、ヒトはプログラムに矛盾する活動、ミスやずるをすることを禁じられるわけで、その為にヒトはシステムに言われた指示どおりに活動することを要求されます。システムやロボットがマスターとなり、ヒトはそれの下で作業をするようになると、これはもはや協業ではなくロボット化、極端な悪い言い方をすれば奴隷化という構図になってしまう。
実際に現在でも生産活動において、特に人間の作業が多い組立現場や物流仕分け現場などでは、ヒトはシステムからの指示を守るように訓練(トレーニング)を受けたり、現場に設置されたモニターの指示を読み取りながら作業をし、その作業が正しく出来たかどうかをカメラやポカヨケ(ミス防止機構)によって判断し、作業のトレーサビリティデータは自動的に収集されるようになっています。
AR(仮想現実)の活用、ウェアラブルデバイスの着用が増えてくることで、作業者にはグラス型モニターの着用し、腕には作業者の心電図などをモニターしながらヒトや腕の動きを管理したり作業間違いをバイブレーションで指示するNFC搭載バンドを着用し、胸にはヒトの現在位置(作業場所が正しいか・セキュリティエリアに立ち入ってないか)や体の傾き(立っているか・倒れているか)を監視するロケーションタグ(空間位置検出)入りRFIDバッチを着用させられ、さらには作業現場にはさまざまなポカヨケのからくりを仕組まれカメラで監視をされているといった、ヒトにとってはなんとも窮屈で不快な作業を強いられることになりそうだ。
この考え方が突き進むと、将来はヒトの頭に電極を接続てシステムと繋ぎ、ヒトの見たものをフィードバックし、ヒトに作業指示をシステムが直接行うという、まさに映画マトリックスさながらのヒトのロボット化になってしまう。まあ、ここまでくるとインダストリー4.0ではなくてその先の5.0になるのかと思うが。
インダストリー4.0の考え方をヒトの活躍する生産現場で取り入れていくには、今後倫理的な考え方や、ヒトとシステムの有り方、ヒトとシステムの接点の持ち方、エルゴノミクスと言った要素を考えていく必要がよりでてくるのではないかと思います。