サイバーセキュリティ領域でAIの二面性が鮮明になってきた。攻撃側がAIを使ってより高度な攻撃を自動生成する一方、防御側もAIで応戦する「AI vs AI」の時代が製造業のセキュリティ現場に到来している。
AIが変えるサイバー攻撃の質と量
Microsoftの「Microsoft Digital Defense Report 2024」によると、AIを活用したフィッシング攻撃の成功率は従来の3.7倍に上昇した。製造業に対するターゲット型攻撃では、AIが企業の公開情報・社員のSNSを自動収集して「この会社の工場長に成りすました自然なメール」を大量生成する。2024年上半期に日本の精密機器メーカー・化学メーカー計6社が標的型攻撃を受け、うち2社で設計データが流出した。
防御AI——製造業への自律型セキュリティ展開
CrowdStrike、Darktrace、Vectra AIが製造業OT環境向けの「自律型セキュリティAI」を展開している。これらのシステムは工場ネットワークの正常な通信パターンをAIが学習し、異常な通信(人間では発見困難な微細な変化)をリアルタイムで検出して自動遮断する。住友化学は2024年にDarktrace OTを全国12工場に展開し、従来の人的監視では見逃していた「内部不正の兆候」を複数検出することができた。
Harryの着眼点
AI攻撃 vs AI防御の競争は、製造業のセキュリティ担当者に根本的な問いを突きつけます。人間の速度では攻撃に対応できない時代になっており、セキュリティもAIに任せざるを得ない。一方で「AIが自動遮断する」判断の誤りが生産停止を引き起こすリスクもある。製造業のセキュリティAIには「速さ」と「慎重さ」の両立が求められており、これが技術的な最難関です。
出典:Microsoft「Digital Defense Report 2024」/ Darktrace「OT/ICS Security for Manufacturing」2024年 / 住友化学「Darktrace OT導入事例」2024年