水素エネルギーと製造業——グリーン水素が「重工業の脱炭素」を実現するか

水素エネルギーが製造業の脱炭素戦略の切り札として急速に注目を集めている。特に電化が困難な製鉄・セメント・化学などの高温プロセスでは、グリーン水素(再エネ電力で製造した水素)への燃料転換が現実的な脱炭素手段として各国で実証・商用化が進んでいる。

グリーン水素の製造コストと競争力の変化

2020年時点では1kgあたり3〜6ドルだったグリーン水素のコストが、電解槽(エレクトロライザー)の技術革新と規模拡大により2025年には一部地域で2ドル以下、2030年には1ドル台への低下が見込まれている。これは天然ガス改質による灰色水素との競争力が見えてきた水準だ。日本でも福島・北海道などで再エネ水素製造の実証プロジェクトが進み、川崎重工が液化水素の海上輸送を実証するなど水素サプライチェーンの構築が始まっている。

鉄鋼・セメント・化学における水素活用の実装

製鉄分野では水素を還元剤として鉄鉱石から鉄を作る「水素還元製鉄」が注目の的だ。日本製鉄のCOURSE50・スウェーデンHYBRITプロジェクト・ドイツティッセンクルップのグリーン水素製鉄が実証段階に入り、2030年代の商用化を目指している。セメント製造ではロータリーキルンの燃料を化石燃料から水素・アンモニアに転換する実証が日本セメント協会と各メーカーで進んでいる。化学産業ではナフサ分解炉の水素化や、水素を化学原料として活用するパワー・トゥ・ケミカル技術の開発が進んでいる。

Harryの着眼点

水素はカーボンニュートラル製造の「最後のピース」となりうるが、課題もある。輸送・貯蔵のコストと安全性、電解槽・燃料電池の供給不足、グリーン水素の供給安定性などだ。日本政府は「水素基本戦略」を改訂し、2030年に年間300万トン・2050年に2000万トンの水素供給を目標に掲げている。このロードマップの達成には、製造業が水素需要を喚起することと、国際的な水素サプライチェーンの構築が不可欠で、両者が車の両輪として進むことが日本の水素立国戦略の成否を決める。

出典:経済産業省「水素基本戦略改訂版」(2025)、IEA「Global Hydrogen Review 2025」

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