拡張現実(AR)技術を活用した工場設備の保守・点検システムが製造業に急速に普及している。熟練技術者の知識をデジタル化し、若手作業員への技能伝承とリモート支援を同時に実現する。
ARグラスで現場作業が変わる——PTC Vuforia・Microsoft HoloLens活用事例
ARグラスをかけた作業員が設備を見ると、手順・警告・部品情報がリアルタイムに重畳表示される。遠隔地の専門家とビデオ通話しながら音声・身振りでガイドを受けられるため、従来なら専門家が現地に赴く必要があった複雑な保守作業を現場の若手が対応できるようになる。ロールスロイスはHoloLensを使った航空機エンジン点検で作業時間を40%削減したと報告している。
技能伝承の切り札——ベテランのノウハウをARコンテンツ化
団塊の世代の大量退職で深刻化する技能伝承問題の解決策としてもARが注目される。ベテラン技術者の作業映像・音声解説をARコンテンツ化し、後進が実際の設備を前にして学べる「デジタル道場」を構築する企業が増えている。国内では川崎重工業・住友電気工業などがAR活用の技能教育システムを導入している。
Harryの着眼点
日本の製造業が抱える「暗黙知の消失」問題は深刻です。ベテランが退職するとともに、マニュアルには書けない感覚や判断が失われていく。ARはこの暗黙知を可視化・形式知化する最有力ツールだと思います。初期コストは高いものの、技能消失による生産損失と比較すれば十分な投資対効果が見込めます。
出典:PTC Inc.「AR in Manufacturing Report 2022」、川崎重工業株式会社技術レポート2022年