半導体製造技術は物理的限界に挑みながら進化を続けている。ASMLのEUV(極端紫外線)露光装置を核とした2nmプロセス世代のチップ量産が台湾・韓国・米国で始まり、半導体製造装置・材料の供給網を担う日本企業にとって最大の競争機会が訪れている。
EUV露光装置と2nm世代チップの現状
半導体微細化の鍵を握るEUV露光装置は、ASMLがほぼ独占する1台200億円超の超精密機器だ。TSMCは2024年から3nm量産を本格化させ、2nmプロセスの量産に向けた準備が進んでいる。さらにASMLが開発中の次世代High-NA EUV装置(1台500億円超)により1.8nm以下の超微細化が可能になる見通しだ。インテルは「4A Angstrom」世代チップの設計を進め、Samsung・TSMCとの三つ巴の微細化競争は2026〜2028年に決定的な局面を迎える。日本のラピダスは2nmプロセスの国内量産を目指し、IBMとの技術提携・千歳拠点建設を進めている。
日本の半導体装置・材料産業の競争力
日本は最先端チップ製造の設計・量産では遅れをとっているが、半導体製造装置・材料では世界最高水準の競争力を維持している。東京エレクトロン(TEL)・ニコン・キヤノン・SCREENホールディングスなどの装置メーカーは、CVD・エッチング・洗浄・検査装置で世界シェアの20〜40%を握る。信越化学・JSR・住友化学などの材料メーカーはフォトレジスト・高純度シリコンウエハ・CMP研磨液で世界首位クラスのシェアを持つ。この「陰の主役」としての地位を守り、EUV世代・2nm世代対応の次世代装置・材料開発への投資を加速することが日本の半導体戦略の核心だ。
Harryの着眼点
半導体は現代産業のコメであり、その製造技術の主導権は国家安全保障に直結する戦略物資だ。日本政府がTSMC熊本工場誘致・ラピダス支援に兆円規模の補助金を投じるのはこの認識に基づく。一方で装置・材料という「縁の下の力持ち」分野での日本の強みは、特定の先端チップ製造能力の有無より持続的かつ代替困難な優位性を持つ。この強みをさらに強化しながら、新興の2.5D/3Dパッケージング・チップレット技術の製造装置・材料でも日本が世界をリードできるよう、官民連携での戦略投資が急務だ。
出典:ASML「Annual Report 2025」、ラピダス「2nm量産計画進捗報告」(2026)、経済産業省「半導体産業政策」(2026)