3Dプリント(アディティブマニュファクチャリング:AM)技術が、プロトタイプ製作の域を大きく超えて量産製造の重要な手段として定着しつつある。金属・樹脂・セラミック・生体材料など多様な素材に対応したAM技術の進化は、製造業の設計・生産・サプライチェーンの概念を根本から変えている。
金属AMの量産応用——航空・医療・自動車での実用事例
金属3Dプリント(SLM・EBM・DED等)は航空・宇宙・医療機器・自動車の高付加価値部品量産に採用が広がっている。GEアビエーションがジェットエンジンの燃料ノズルを3Dプリントで製造(1部品で従来20部品を統合)したことで航空業界全体が注目し、ボーイング・エアバスも機体構造部品へのAM採用を拡大している。医療分野では患者の骨格データから最適な形状のインプラントを3Dプリントでカスタム製造するサービスが普及し、人工股関節・脊椎ケージ・歯科インプラントで量産事例が増えている。自動車ではVolkswagen・BMWが量産部品のAM採用を進めており、日本でもトヨタ・本田技術研究所が採用を検討・実施している。
連続ファイバー強化複合材AM——高強度・軽量部品の革新
炭素繊維・ガラス繊維などの連続繊維を樹脂と同時に積層できる連続ファイバー強化複合材AM(MarkforgedのMarkOne・Anisoprint等)が高強度・軽量部品の量産に革命をもたらしている。鉄の20倍の強度比(強度/重量比)が実現できるCFRP部品を複雑な形状で製造できるため、航空宇宙・スポーツ機器・産業機械の軽量化に採用が広がっている。
Harryの着眼点
3Dプリントの普及は「製造の民主化」をもたらす。大規模工場・金型投資・大量生産という従来の製造モデルなしに、必要な部品を必要な時に必要な量だけ製造できる「デジタル在庫(データとしての部品保管)」が現実になりつつある。日本でもAM技術・材料・ソフトウェアの国産開発が官民連携で進んでいるが、材料・装置コストの低下と品質認証体制の整備が、AMの本格的な量産採用を加速させる上でさらに重要な課題として残っている。
出典:GE Aerospace「Additive Manufacturing Annual Report 2025」、経済産業省「アディティブマニュファクチャリング産業活用の指針」(2026)