第4次産業革命の競争は国家間の総力戦の様相を呈している。中国は「中国製造2025」から次の段階へと進み、韓国・台湾は半導体を起点に製造業DXのエコシステムを強化している。日本の製造業がグローバル競争で存在感を保つためには、明確な強みの選択と集中、そして官民連携による戦略的投資が不可欠だ。
中国の製造業DX——「スマート製造」国家戦略の現状
中国は「インターネット+製造業」政策のもと、製造業のスマート化を国家戦略として推進している。ファーウェイ・アリババ・テンセント・バイドゥなどのIT巨人が産業AIプラットフォームを提供し、製造現場へのデジタル技術普及を支援している。特に電気自動車(EV)産業では、BYD・NIO等がバッテリー管理・自動運転・車両ソフトウェアをデジタルで完結させる「ソフトウェア定義型製造」を確立しており、日本の伝統的自動車メーカーに対する強力な競合となっている。2025年時点で中国の工業用ロボット導入台数は日本・ドイツを大幅に上回り、世界最大の製造自動化市場となっている。
韓国・台湾のニッチ戦略と日本への示唆
韓国はサムスン・SKハイニックスを中核とした半導体産業と、現代自動車グループのEV/水素戦略を軸にスマート製造を推進している。台湾はTSMCを中心とした半導体製造の圧倒的競争力に加え、ASUS・フォックスコンなどがスマートファクトリー化を推進し製造受託(EMS)の高度化を図っている。両国に共通するのは「特定領域での圧倒的強み」と「国際的なオープンイノベーション戦略」だ。日本製造業への示唆は、全方位的な競争ではなく、精密加工・素材・部品・製造装置など日本が世界シェアを持つ領域への集中投資と、デジタルによるその強みの深化だ。
Harryの着眼点
日本の製造業の強みは依然として高い品質・精度・信頼性にある。これをデジタルで武装することで「高付加価値製造」のポジションを強化するのが現実的な戦略だ。自動車・工作機械・電子部品・化学素材など、世界的に代替困難な製品群でデジタルツイン・AI品質保証・グリーン製造を組み合わせ、プレミアムブランドとしての地位を確立することが日本の針路となる。そのためにも産学官連携による人材育成と研究開発への投資強化が急務だ。
出典:経済産業省「ものづくり白書2025」、JETRO「アジア製造業DXレポート」(2025)