2021年から続いた半導体不足は、グローバルサプライチェーンの脆弱性を製造業に痛感させた。自動車・電機・産業機器メーカーが軒並み減産を余儀なくされたこの経験は、「最適化=コスト最小化」一辺倒だった調達戦略を「レジリエンス重視」へと根本から転換させている。
マルチソーシングと地産地消調達への転換
半導体危機以降、製造業の調達戦略はシングルソースからマルチソースへの移行が加速した。一社依存から複数サプライヤーへの分散、地理的集中リスクの低減のための調達先多様化が業界全体で進んでいる。「フレンドショアリング」(同盟国・友好国内でのサプライチェーン完結)や「リショアリング」(国内回帰)が欧米企業を中心に進み、日本でも半導体・蓄電池・医薬品原料などの戦略物資の国内生産強化が政策課題となっている。台湾TSMCの熊本工場設立もその流れを象徴する動きだ。
デジタル技術による調達リスク管理の高度化
調達リスク管理にデジタル技術が積極活用されるようになっている。AIがサプライヤーの財務状況・地政学リスク・自然災害リスクを統合評価するリスクスコアリングシステムが普及し、問題発生前の早期警告を可能にしている。ブロックチェーンを活用した部品トレーサビリティ(原産地・品質証明の改ざん防止)や、デジタルサプライチェーンコントロールタワー(全体可視化・意思決定支援)の導入が大手製造業を中心に進んでいる。
Harryの着眼点
サプライチェーンのレジリエンス強化は短期的にコストアップをもたらすが、長期的な事業継続リスクの低減という観点では不可欠な投資だ。「ジャスト・イン・タイム」から「ジャスト・イン・ケース」への発想転換が進む中、戦略在庫の積み増しとデジタル可視化を組み合わせた「スマート在庫管理」が注目を集めている。経営層がサプライチェーンリスクを財務リスクとして認識し、CFOとCOOが連携した全社的なレジリエンス投資の意思決定体制を構築することが重要だ。
出典:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」改訂版(2025)、McKinsey「Supply chain resilience: Getting ahead of the next disruption」(2024)