サイバー攻撃が製造業を直撃――OTセキュリティの強化が急務に

製造業のデジタル化が進む中、工場のOT(運用技術)環境を狙ったサイバー攻撃が急増しています。2020年には本田技研工業がランサムウェア「SNAKE」に感染し、世界の工場が一時停止するという衝撃的な事件が発生しました。IT(情報技術)とOTの融合が進む現代の工場では、サイバーセキュリティは経営リスクの核心課題となっています。

OT環境へのサイバー攻撃の実態と手口

製造業のOT環境(PLC、SCADA、DCSなど生産設備の制御システム)は、かつてはクローズドなネットワークで運用されていたため、サイバー攻撃のリスクは相対的に低いとされていました。しかし、IoT化やスマートファクトリー化に伴いOTとITが接続されるようになると、ITの脆弱性を経由してOT環境への侵入が可能になりました。攻撃者の手口は巧妙化しており、主なものとしてランサムウェアによる生産データの暗号化と身代金要求、産業用制御システム(ICS)を標的とした「Triton」「Industroyer」などの専用マルウェア、サプライヤーのシステムを踏み台にした「サプライチェーン攻撃」などが確認されています。セキュリティ企業Clarotyの調査では、2020年のOTサイバーインシデントは2019年比で倍増しています。

製造業が取り組むべきOTセキュリティ対策

OTセキュリティ強化の第一歩は、自社のOT資産の「見える化」です。工場内にどのような制御機器が存在し、どのようにネットワーク接続されているかを正確に把握できていない企業が多いのが実態です。次に、ITとOTのネットワーク分離(セグメンテーション)、OT機器への不正アクセス検知(IDS/IPS)の導入、そして老朽化した制御システムのパッチ適用・更新が重要施策として挙げられます。経済産業省は「産業サイバーセキュリティ研究会」を設置し、製造業向けのセキュリティガイドラインを策定。また、IPAが公開する「重要インフラのサイバーセキュリティに係る行動計画」も実践的なロードマップとして活用されています。

Harryの着眼点

本田のランサムウェア被害は、「製造業のサイバー攻撃は対岸の火事ではない」という現実を日本に強く突きつけました。特に憂慮すべきは、OT環境の機器には長寿命のものが多く、セキュリティパッチの適用が困難なレガシー設備が工場内に溢れている点です。スマートファクトリー化を推進するほど攻撃面(アタックサーフェス)が広がるというジレンマがあります。だからこそ、デジタル化の設計段階から「セキュリティ・バイ・デザイン」の思想を組み込むことが不可欠です。セキュリティは後付けではなく、最初から設計に組み込む時代です。

出典:経済産業省「産業サイバーセキュリティ研究会 報告書」2020年 / Claroty「The Global State of Industrial Cybersecurity 2020」

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