製造設備だけでなく、製造「プロセス」自体をデジタルツイン化する「プロセスデジタルツイン」が化学・製薬業界で急速に普及している。反応条件・温度・触媒量といったプロセスパラメータをリアルタイムに最適化し、品質の安定化と歩留まり向上を実現する。
プロセスデジタルツインの仕組みと製薬業界での応用
プロセスデジタルツインは、反応釜・蒸留塔・結晶化装置などのプロセス設備を物理モデル(第一原理)とデータ駆動型モデル(機械学習)を組み合わせた「ハイブリッドモデル」でシミュレーションする技術だ。Aspen Technology、AVEVA、Rockwell Automationが主要ソリューションを提供している。アストラゼネカは新薬の連続生産プロセスにプロセスデジタルツインを適用し、品質外れ品率を従来比80%削減、生産量を35%向上させた。
日本の化学・製薬メーカーでの実装
住友化学は石油化学プラントのエチレン分解炉にプロセスデジタルツインを導入し、コークス生成量をリアルタイム予測して運転条件を最適化することで、年間定期修理の間隔を1.5倍に延長した。大塚製薬は抗生物質の発酵プロセスにプロセスデジタルツインを適用し、バッチごとの品質変動を45%低減。両社の事例はGxP(GMP・GCP)規制下での「モデル検証プロセス(MVUF)」の確立が普及の鍵であることを示している。
Harryの着眼点
プロセスデジタルツインは「設備のDX」より難易度が高いですが、化学・製薬では特に大きな価値を持ちます。製造プロセス自体が製品品質の決定因子であり、そのプロセスをリアルタイム最適化できれば、品質のばらつきが劇的に低下します。規制産業(製薬・食品)での実装には、当局認可のプロセスが必要で時間がかかりますが、一度確立すれば持続的な競争優位になります。
出典:Aspen Technology「プロセスデジタルツイン事例集」2024年 / アストラゼネカ「連続生産プロセスツイン」2024年 / 住友化学「石化プラントデジタルツイン効果」2024年