工場のOT(オペレーショナルテクノロジー)環境を標的にしたサイバー攻撃が急増している。Claroty社の調査によると、2024年のOTインシデントは前年比97%増加し、食品・エネルギー・自動車の製造拠点が主要ターゲットとなった。ITとOTの統合が進むほど攻撃面が広がるという矛盾が、スマートファクトリー推進の最大の阻害要因になりつつある。
OT特有のセキュリティ課題——ITセキュリティでは守れない理由
ITシステムのセキュリティは「機密性→完全性→可用性」の優先順位で設計されるが、OT環境では「可用性→完全性→機密性」の順になる。製造ラインは24時間稼働が前提で、パッチ適用のためのダウンタイムが許容されないケースが多い。また、PLCやSCADAシステムは10〜20年前に設計されたレガシー機器が混在しており、暗号化通信や認証機能を持たないものも多い。攻撃者はこの脆弱性を突いてOTネットワークに侵入し、ランサムウェアで生産ラインを停止させる手口が増加している。
主要インシデントと対策の最前線
2024年6月、欧州の主要自動車部品メーカーがOTランサムウェア攻撃を受け、3工場で計8日間の生産停止を余儀なくされた。被害額は推定2億ユーロ超。対策として、Palo Alto NetworksのOT Security SuiteやDragosのプラットフォームが注目されている。IEC 62443(産業用オートメーションセキュリティ規格)の適用企業が欧米を中心に急増しており、日本でも経済産業省が2025年のOTセキュリティガイドライン改訂を予定している。
Harryの着眼点
OTセキュリティは「コスト」ではなく「事業継続の投資」と位置づける必要がある。製造ラインが1日停止すると数億円の損失が生じるケースも珍しくなく、セキュリティ対策コストとの比較で優先度を判断すべきだ。特に重要なのはゾーン分離とネットワーク可視化で、まず「何が繋がっているか」を把握することが出発点になる。日本の中堅製造業ではIT部門とOT部門の縦割りが依然として強く、横断的なセキュリティガバナンスの構築が急務だと感じている。
出典:Claroty「グローバルOTサイバーセキュリティレポート2024」;IEC 62443シリーズ規格;経済産業省「産業サイバーセキュリティ研究会 報告書」(2024年)