MaaS(Mobility as a Service)の概念は、個人の移動だけでなく製造業の物流にも大きな変革をもたらしています。自動運転トラック、ドローン配送、ラストワンマイル自動化が物流業界と製造業のサプライチェーンを根本から塗り替えようとしています。
自動運転トラックが切り拓く幹線物流の未来
日本では物流業界の「2024年問題」(ドライバーの時間外労働規制強化)が迫る中、自動運転トラックへの期待が急速に高まっています。国土交通省は2021年、高速道路での自動運転トラック実証実験を本格化させており、2025年頃の一部商用化を視野に入れています。国内スタートアップのT2(ティーツー)は高速道路の無人自動運転トラック実現に向けた開発を進め、海外ではTesla Semi、Waymo Via、TuSimpleなどが大型トラックの自動運転を実証段階まで進めています。幹線高速道路での自動運転とドライバーが担う「最初と最後のマイル」を組み合わせる「ハブ&スポーク」モデルが現実的な移行シナリオとして描かれています。この実現により、ドライバー不足と物流コスト削減を同時に解決できると期待されています。
ドローン配送とロボット配送が工場物流を補完
アマゾンのPrime Airに代表されるドローン配送は、製造業においても緊急部品の調達・工場間の少量物資輸送での活用が研究されています。国内では2022年からドローンのレベル4飛行(有人地帯上空)が解禁される予定(2021年当時の情報)であり、都市部でのドローン配送に向けた規制整備が進んでいます。工場構内でのドローン活用では、棚卸作業(在庫確認飛行)、屋内での部品搬送(Amazon社の特許取得済みシステム)などが実証されています。また、ラストワンマイル配送ではDelivery Robotics(配送ロボット)の導入も始まっており、Starship TechnologiesやNuroが先行事例を積み上げています。物流の自動化・ロボット化は製造業と物流業の境界を曖昧にしながら、サプライチェーン全体の効率を高める方向に進んでいます。
Harryの着眼点
MaaSと自動運転物流の実現は、製造業の競争環境を変えます。リードタイムが大幅に短縮され、緊急対応コストが下がることで、在庫を極限まで減らすジャスト・イン・タイムの進化形が可能になります。一方で、物流の自動化が進むほど「最後は人が判断する」部分のリスクも高まります。自動化でできることと、人間が必要なことを明確に区別して設計する思想が重要です。2024年問題は物流業界の危機であると同時に、自動化・DX推進の絶好の機会として捉えることをお勧めします。
出典:国土交通省「自動運転トラック幹線物流実証事業」2021年 / 経済産業省「物流DXの実現に向けた政策方針」2021年