インダストリー4.0で無くなっていく人間臭さ
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だいぶ昔「熟練工は完璧か?」の記事でも記載した、かつてドイツ車の品質が金曜日の午後に作られたもので低下する、といった笑い話のような出来事を取り上げたが、ドイツでは日本以上に少子化、人手不足が進んでいるようだ。特に技能職では人手不足は深刻だそうで、東欧からの出稼ぎに頼りきっているとのこと。

その東欧も、昨年10月に私がチェコを訪問した際だが、人手不足が深刻だそうだ。
これだけEU域内で失業率上昇だとか移民により職を奪われたとか騒がれているが、職を求める側の要求と、雇用側の要求が合致せずに適材適所がなかなか上手くいかない。雇用者に特定の技能を求めすぎることによる雇用のミスマッチの発生だ。

そんな状況もあってか、ヨーロッパ、特にドイツの企業では人の技能に頼らないモノづくりが日本以上に進んでいる。それさえできれば、EU域外からの移民や難民に雇用の手を伸ばすことが出来る。

工場には最小限の生産技術要員にして、設備仕様や動作プログラムなどはマザーとなる工場のコピー。すでに熟練工の作業要領をロボットが心得ているケースも多々見られる。組立工程などでは、以前ならボルト締付は熟練が緩まないころあいを見て停め、締付トルクを確認しその品質チェックを徹底して紙に書き出し工程能力や傾向を管理する、なんてことがすでに高度な締付ツールやロボット・データ収集システムにより自動化されている。
まさにインダストリー4.0の初期的な段階は整っている場所も多い。

そして、その考え方は世界中の工場に推し進めてようとしている。
そもそも人を教育する、熟練工を育てる、知識を伝承するといった考え方がないのである。
日本の企業の製造現場によく見られる「チーム一丸となってがんばって取り組もう、技能を向上させよう」といった、ある面人間臭さがどんどんなくなってしまうことに寂しさを感じるのは筆者だけではないだろう。